第2日目
Friday 30 April, 2010


目が覚めれば、そこはエディンバラでした。
はい、別に何もおかしくないですね。


エディンバラのユースホステルでは朝食は別料金でした。
"Continental"と"Cooked"なる2コースが選べるそうで、
"Continental"が大陸式を意味するならば、"Cooked"の方が島国・英国式に違いないっ!
という事でCooked breakfastを選択、お値段は£5.95。さっそく英国料理にありつく事ができました。

不味い事で定評のある英国料理ですが、
結論から言えば、世界が口をそろえて言う程不味くはないと思いました。

確かに僕も全体的に不味いとは思ったけれど、それは好みの範疇程度です。
スクランブルエッグは味がついてなかったし、
その下に敷いてあったはんぺんのような何かはもっちりしっとりしていてなんだかよくわからなかったけれど、
イギリス料理の写真でよく見る豆(ベイクドビーンズ)は思った程不味くなかったし、ベーコンは素直に美味しかった。


まぁ、名古屋に(それもマウンテンの徒歩圏内に)
住んだ事のある人間の舌を信用してもらっても困るんですけどね。




ユースホステルを出たらエディンバラの街並みを眺めながら、先ずは荷物を置く為に駅へ。
エディンバラにはウェイヴァリー駅とヘイマーケット駅の二つがあります。
今日の放浪の後、エディンバラを発つ時はウェイヴァリー駅を使う予定なので、そっちへ行きます。
ウェイヴァリー駅の荷物預かり所でボストンバッグを預けたら、
次はとりあえずカールトン・ヒルを目指す事にしました。今決めました。

カールトン・ヒルはエディンバラの街を一望できる小高い丘で、そこには記念碑やら天文台やらがあります。
もっとも、カールトン・ヒルへ行こうと思った事に理由などありませんが。
私の行動にいちいち理由を求めてはいけません。困ります。



道すがら、エディンバラの街並み。
半地下…ってやつとは違うのかな。なんか家の周りが堀のようになっていて、
下の階から出入りできるスタイルはイギリスではわりとデフォのようで、結構よく見かけました。



街の風景がいちいち絵になる。それが欧州。


そんなわけでカールトン・ヒルを登ります。

丘を登ったところで鎮座する大砲。





カールトン・ヒルから望むエディンバラの街。
手前の時計塔はウェイヴァリー駅で、奥に見ゆるがエディンバラ城。だと思う。
城はドイツで充分堪能したので今回はパス。



なんかそそり立ってるオベリスク。
オベリスクっていったいなんですか、ラングドン先生?


オベリスクとは、古代エジプトに多く製作された記念碑(モニュメント)の一種で、
その影を利用して日時計としての役割も果たした。
先端のピラミッド部は創建当時、金や銅の薄板で被覆され、
太陽神のシンボルとして光を反射して輝くようにされていたと言う。
また、オベリスクは男根象徴で、男性の生殖力、豊穣、再生、鎮静力を表す。

参考文献: Wikipedia、
        J. C. クーパー 著 「世界シンボル辞典」 (三省堂)より


つまりこれも男根の象徴なんですね、フロイト先生!




街の向こうには海が見える。
多分北海。ノルトゼー。



カールトン・ヒルからの景観を堪能したら丘を降りて、そろそろ今日のメインに行ってみる事にする。
本日の目的地はロスリン礼拝堂。
ダ・ヴィンチ・コードにも出てきた、ミステリー溢れる場所である。

だが、その前に。
ロスリン礼拝堂から駅前に帰ってくる時間を考えると、
ヨーロッパの事だからお店が閉まってスコットランド土産が買えない可能性がある。
しかしスコットランドで絶対に買っておきたい土産がある。

それは…キルト!
そう、男が堂々と穿けるスカート状の民族衣装!
スカートじゃないから恥ずかしくないもん!


いや、スカートではあるのでは…
というか…あれ…俺、女装癖なんてないハズだが…

ほら、あれだ、前からスカートの構造が一体どうなっているのか知りたかったから資料用に…
いや、それだったら日本で手に入れる方法が何かあるんじゃないか?
もっと普通に、本物のスカートを…
ああ、昔流行ったブルセラってやつですね!


あと変態ついでに、豆知識。
キルトの下は"はいてない"のが正式です。



まぁ、そんなHENTAI談義はともかく、
買えなくなるのは困るので、先にキルトを買っておく事にします。
さっそく売ってそうな店を探してみたら、意外に簡単に見つかりました。
さすがエディンバラ、スコットランド随一の観光地なだけはあります。

中に入ってキルトの他、スコットランド的ないろいろを見てまわっていると、店員が声をかけてきました。
'90年代の日本の主婦なら「みーてーるーだーけー」などと言うところでしょうが、
英語でもこういう時は(I'm) just looking.と言うんだそうです。
しかし、そんな英会話知識は今は必要ありません。
私はキルトを買うつもりなのだから、この店員との会話…受けて立ちます!

日本であっても、店の人と会話するのは
コミュ障気味な私にとっては並々ならぬ勇気と覚悟を必要としますが、
しかし、某課長補佐代理心得「ストマックエイクだ!」のように、
私には買い物という状況における奥の手、「ディスワンプリーズ」があります。
この一言だけで英語での買い物は大体乗り切る事ができるハズです!



で。

キルトだけを買うつもりでいたのに
気がついたらスコットランド衣装
一式買わされていました。


…あれですね、
日本人観光客ってすんげぇカモですね!





買わされた中の一品、
スコットランドの強い風でキルトがめくれないよう止める為のピン。
剣をモチーフにしています。

日本の土産物屋かっ!…と思いましたが、
中央の"立ち上がる獅子"はスコットランドの紋章ですし、ヒルト(鍔)中央の紋様はケルト模様っぽいです。
そして何よりこの剣、よく見たらクレイモアじゃないですか。
クレイモアと言えばミリタリー物でよく出てくる指向性対人地雷…ではなく、
RPGやジャンプSQでよく出てくる両手用の大剣ですが、
そもそも元ネタのクレイモアとは、スコットランド人が使っていた剣でした。
さすがヨーロッパ。土産物ひとつとってもこれだけの意味を見出せます。



キルトも買った事ですので、いよいよロスリンへ。
ロスリンへはバスで行く事になります。

目的のバスまでまだ時間があるのでSUBWAYで昼食のサンドイッチを購入、
ベンチで食べながらバスを待ちます。


バス待ちの間、トイレにて謎のガチャポンを発見。なにやら噛んで使う歯ブラシのようです。



定刻より数分遅れてバスが到着。まぁバスだから仕方ない。

今回の旅では結構頻繁にバスを使う予定なので、イギリスでのバスの作法は予習済み。
バスに乗る時はバス停で立っているだけではダメで、
手を振るなりして乗車する意思表示をしないと止まってくれないんだそうです。
で、止まってくれたら運転手に行き先を告げます。
するとその場で運転手は発券してくれるので、運賃を先払いします。

これが英国式(ブリティッシュスタイル)のバスの利用法です。



バスに揺られて30分程。道の看板にRosslynの文字が見えてきたあたりでバスが停車したので、
ここで降りるのかなー、と思って立ち上がったらどうやら早とちりだったらしく、
同じくロスリン礼拝堂を目指すおねーちゃんがチッチッチッって止めてくれました。
ありがたい。そしてかっけぇぜ、おねーちゃん。



そんなわけでロスリンに到着。
目的の礼拝堂はバス停から徒歩5分ぐらい。

さて、ロスリン礼拝堂。
ダ・ヴィンチ・コードの舞台にもなったこの小さな礼拝堂には
聖書やテンプル騎士団、ケルトの信仰など様々な伝承に基づく数多くのレリーフに溢れています。
中には、コロンブスが新大陸を発見するより100年以上前に刻まれたはずなのに
アメリカ大陸が原産地とされる植物のレリーフという、ちょっとオーパーツじみたものまであって
ミステリーハンター…もといオカルトマニア垂涎の不思議空間となっています。



礼拝堂内での撮影は禁止だったので、写真は概観だけになります。
風雨による劣化を防ぐ為に屋根がついていてがっかりさせられる、というような話は聞いていたが、
これは工事とか復元作業とかのレベルじゃないのか?

どうやらその通りっぽくて、KEEP OUTのテープの向こうで
礼拝堂のど真ん中、修復中だか発掘中だか、おっさん達が床をガリガリやってました。



こんなふうに!


いや、そりゃ楽な姿勢でやった方が効率はいいし、退屈な作業だからだべるのもいいだろうけど…
もっとこう…仕事してますよアピールというか…

ダ・ヴィンチ・コードでは、何世代もかけて参列者を特定のルートで案内する事により
床に巨大なダビデの星が刻み込まれているとの事ですが、
おっさん達がガリガリやっていて確認できません。
仕方ないけど…でも…く…くやしいっ!

でも仕方ないので、見学できるレリーフをひとつひとつ観賞します。
中でも特に印象的だったのがグリーンマンの彫刻。
グリーンマンというのはケルト神話だか信仰だかに出てくる地神的な何かなのですが、
この彫刻は天井から斜め下に向かってこう、ぐわぁーっと、ネオエクスデス的に迫ってくるような。
とにかくミステリーだとか象徴だとか抜きにして一介の彫刻作品としても充分見ていて面白いものでした。


一通り見物を終えたら、売店で土産物を物色。
その後バスでエディンバラの中心街へ戻ろうとするも、次のバスまで40分以上あります。
だというのに、バス停には十数人の人がたむろしています。
そりゃ、だべっていれば暇ではないだろうが…これも国民性なんですかねぇ?
私はというと、暇を潰すという点についてはまったく問題ないのですが、
とにかく寒いので40分もじっとしている事はできません。
やはり仕方ないので、ロスリンの町を(主にバス停周辺を)ふらふら歩き、
近くで雑貨屋を見つけたので、中に入って寒さをしのいだりしていました。


バスが来てウェイヴァリー駅へ戻ったら、先ずはブリットレイルパスをバリデート。
つまりはブリットレイルパスの使用開始を宣言する改札のような手続きです。

バリデーションが済んだら荷物を回収し、次の電車を調べてみる。
すると、次の目的地シェフィールド行きは、なんと次が最終電車のようだったので急いで乗り込む。
この時、時刻は大体18時。
しかしやっぱり真昼のように明るいので、どうしても18時という気がしない。
飛行機による時差ボケはまったく気にならないけれど、
こういう意味の時差ボケは旅に影響アリですね。



座席に座って落ち着いたら、今夜の予定を考える。
トーマスクックによれば、このままシェフィールドへ行ったら到着は22時頃。
エディンバラからシェフィールドまではブリテン島の3分の1くらい距離があるのだ。
そのシェフィールドは地球の歩き方に載っていない町なので手元に地図は無い。
そんな状態で宿を探すのは至難の業と思われる。
そこで、シェフィールドまでで適度に中間な位置にある大きめの町で降りる事にした。
無計画と無謀は違うのだっ!

そんなわけでスコットランドを脱してイングランドに入り、降り立ったのが、ニューキャッスル・アポン・タイン。
ドイツのフランクフルト・アム・マインや、ローテンブルク・オプ・デア・タオバーみたいに
町の正式名称に通っている川の名前がついている。
ドイツには、大都市フランクフルトとは別にもう一つフランクフルトという名の町があり、
ローテンブルクには、ローテンビュルクというそっくりな名前の町がある。
という事は、イギリスには他にもニューキャッスルという名前の町があるのだろうか。ありそうだなぁ。

地球の歩き方に載っていた駅の近くの中級ホテルはすぐに見つかった。
一見それなりにゴージャスに見えて£70。東京駅付近のビジネスホテルより安くないか?
しかも朝食付きで、なにやらサウナやプールやジャグジーが使えるらしい。

が、チキンな私にはプールなどという慣れないサービスは勝手が分からな過ぎてノーサンキューである。
更にシェフィールドまでの残りの距離と移動時間を考えれば、明日はなるべく早く出発したい。
と、いうわけでそのへんの権利は放棄して、今夜はさっさと寝てしまう事にしました。